Exhibition Footprint:YUKA TSURUNO

〒112-0014 東京都江東区東雲2-9-13-2F [地図]
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url: http://www.yukatsuruno.com
イメージ 展示名 開催期間 概要
松川朋奈「Blind」 2017年5月20日~2017年6月17日
Viewing space vol.002: mamoru 2016年10月29日~2016年12月3日 ユカ・ツルノ・ギャラリーは、天王洲のアートコンプレックス内共有ビューイングスペースにて、mamoruの新シリーズのスクリーニングを10月29日(土)から12月3日(土)まで開催いたします。新シリーズ『a long listening journey of a Possible thiStory especially of Japanese & Dutch & something more / あり得た(る)かもしれないその歴史を聴き取ろうとし続けるある種の長い旅路、特に日本人やオランダ人その他もろもろに関して』は、約2年間ハーグ王立芸術アカデミー/王立音楽院・大学院に在籍しながら、リサーチと制作を進めてきたものです。  mamrouはこれまで、「聴くこと」から知りうる過去、現在、未来/架空のオルタナティブな世界観を提示してきました。身近な物や行為から生まれる微かな音をとりあげた『日常のための練習曲』に始まり、ある場所にまつわる歴史上の人物、出来事をとりあげ、資料やインタビュー、フィールドレコーディングを通して「音風景」を書きおこした『THE WAY I HEAR』などを経て、テキストを”想像のためのスコア”として捉えた制作活動を行っています。  今回発表する新シリーズは、17世紀にオランダで出版され、西洋社会に「日本」の人々や暮らし、文化、歴史を初めて体系的に紹介したある地理本から着想されています。当時の情報源であった宣教師や貿易商らの手紙や報告書などのテキストをもとに、想像力によって生み出された「日本」のイメージは誤読をはらむものでしたが、後にヨーロッパで広く読まれ、多くの人々に「リアル」なものとして受け取られていました。mamoruは、そのような実際の過去でもなく全くの想像の世界でもない「あり得た(る)かもしれない」複数の世界が、現在でもどこかで共振し続けているかもしれないと考えています。誇張されたお辞儀などのエキゾチシズムと結びついた身体描写や動作といった新たな視点を取り入れながら、フィクションを持ち込むことでそのような世界と現代との接続を試みています。  スクリーニングでは、このシリーズのレクチャー・パフォーマンスの記録映像と映像2作品を公開します。スクリーニングの最終日である12月3日(土)にはアーティストトークも予定されています。この機会にぜひご高覧ください。
ホセ・パルラ個展「Small Golden Suns」 2016年9月10日~2016年12月3日 パルラの2回目の個展となる本展覧会では、最新作として、約1年をかけて同時進行で描かれたペインティングのシリーズを発表します。このシリーズを通してパルラは、子どもたちの素晴らしさを称え、作家自身の子供時代と青年期の記憶を参照しながら、輝く太陽たちである子供たちが芸術に触れることの大切さについて言及しています。 パルラの作品は、キャンバス上に意図的に描き出されたレイヤー、痕跡、リズミカルな筆致が創造的に結びつけられた独特なスタイルで知られています。本展のタイトル「Small Golden Suns」は、これらの特徴を揃えた本展にて発表される大作のタイトルでもあり、パルラ作品の特徴がよく表れている作品です。パルラは、ペインティング、彫刻、写真、映像など多岐にわたる制作をしてきており、彼の芸術的な取り組みは公共空間にある都市の壁のような性質を持っています。彼の特徴でもある抽象的な身振りから生まれる渦を巻くようなカリグラフィーの筆致は、作品上に現れる記憶のようなレイヤーと質感を生み出し、過去の形跡は現在へと織り込まれます。 今日の世界中の子どもたちの状況を懸念するのと同時に、子どもたちの存在を称える必要性を感じているパルラは、彼自身の鮮やかで想像力にあふれ、冒険のように自由だった子ども時代を常に胸にとめています。その幼少期の経験から得たインスピレーションと、子どもたち一人ひとりがこの世界にもたらす創造的な魔法の大切さは、今現在も拡大しつつある、移民・環境・教育そして自由といった問題と向き合い、この地球規模の対話へと参加させています。 「芸術は癒しとなりうる」とパルラは言いますが、「それ以上にできることがあるはずだ」と付け加えます。パルラにとって芸術とは、感情を揺さぶり、もの語り、すべての年代の人間が共鳴できうるような冒険です。「アートはその日をより豊かなものに変え、子どもも大人も芸術によってポジティブな影響を受けます。世界中で日常的に見られる負の繰り返しから、想像力の世界へと抜け出せるように、それがたとえ一瞬だとしても、芸術は背中を少し押してくれたり、あるいは飛び込ませてくれたりするのです。」と、芸術の重要性について語っています。 パルラの作品は、それを視覚的に捉えた者が即座に自身と作品を結びつけるような手腕にあふれています。作品を見た観客たちが自身の人生を振り返り、そして自己対話を実現することで、作品に様々な読み解き方が与えられるのです。
山谷佑介&松川朋奈「at home」+ 沢渡朔「Rain」 2016年5月4日~2016年7月2日 山谷佑介と松川朋奈の新作で構成される「at home」は、「家」に象徴されるような私的な日常空間に浮かび上がる、人間の営みの痕跡に焦点を当てた展覧会です。一方、沢渡朔の「Rain」は、カメラを持つ手に蓄積された時間の中、雨の情景を敢えて無意識に撮影してきたプライベートワークとなります。 国内外を放浪して様々なアンダーグラウンド・コミュニティで過ごす中で写真を実践してきた山谷は、はかない日々を捉えたストレートなスナップ写真「Tsugi no yoru e」、ライブハウスやクラブの床に原寸大の床写真を貼り、アルコールや靴跡などの痕跡を記録した「ground」、有効期限が切れたポラロイドフィルムを使ったポートレート「Usebefore」など、様々な角度から写真にアプローチをしてきています。本展覧会では、「箱」として立ち現れる家を、赤外線カメラで外部から撮影した新シリーズを発表します。昨年、新婚旅行を記録した作品を発表するなど、家庭を持った山谷は、無機質であるにもかかわらず、住人とともに変化し続け、人間の営みと切り離すことができない「家」に興味を持ち始めます。しかしながら、不可視光線に反応する赤外線カメラを使っても、厚い壁で仕切られた家の中はもちろん覗くことはできません。そのような「箱」としての家を、覗き込むことのできない諦めと、それでもなお人間の営みを覗いてみたいという欲求とともに、人間の痕跡らしきものを捉えることの可能性を探求します。 一方、松川朋奈は一貫して、同世代の女性たちの癖や生活習慣などが、身の回りの事物に「痕跡」として残されていること注目しています。近年はインタビューを重ね、その中で印象に残ったフレーズを作品の主題およびタイトルとし、彼女たちの持ち物や身体を写実的な表現方法を用いた絵画として再構成しています。踵の傷ついたハイヒールや、脱ぎ捨てられたワンピース、身体の傷など、日常生活の中でうまれる破損、形の崩れ、傷跡といった痕跡は、一般的にあまり好まれないものとして受け取られていますが、松川は、それらに表れる人間性や人間の内面に関心を寄せています。事物の忠実な再現をするのではなく、モチーフのクローズアップや筆跡を残さないフラットで美しい表面など、絵画上で再構成することで、これら人間性の影である残痕を新しい価値へと転換させることを試みています。 二人は、写真と絵画という全く異なる方法を用い、またそれぞれ別々な角度から、かつてはそこにあったという不在の痕跡ではなく、その痕跡とともに生き続けるような人々の痕跡に関心をよせています。それらは、他人の存在や日常の不可視な側面へと歩み寄っていこうという取り組みでもあります。 また、沢渡朔「Rain」においては長年ファッションフォトやヌードフォトを中心に、女性との向き合いに熱を注いできた沢渡が、無意識下の中で色として写り込む雨越しの街との出会い頭の光景を、デジタル撮影ならではの光の反射のうつくしさ、艶めきを感じながら、昭和の歌謡曲にも似た郷愁や希望の情感を自分自身の中に探ります。他人への興味を、痕跡を通して追求している山谷と松川の「at home」と、カメラが捉えた世界そのものである沢渡の「Rain」の、両者の違いについてもぜひご覧ください。 初日となる6月4日には3人の作家を囲んでレセプションを開催します。本展にあわせて、沢渡朔写真集「Rain」(国書刊行会)が出版 されます。ぜひご期待ください。
志村信裕「歓迎光臨」 2016年3月19日~2016年4月16日 ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、志村信裕の個展『歓迎光臨』を、2016年3月19日(土)~4月16日(土)まで開催いたします。 志村信裕は「光をあてる」をテーマに、身近なものが持つ個々の文脈を紐解きながら、光がもたらす記憶や時間性について取り組んできています。スニーカーやボタン、あるいは風景といった身の周りの実写映像を投影するインスタレーションでは、路地裏やバケツなど様々な場所や素材がスクリーンとなり、スケールを問わず展開されています。投影によって生まれた新たな関係性は、そこに潜む歴史や人々の記憶を呼び起こしながら既存の空間を変容させてきました。近年は、映写技師の技術を学ぶために移り住んだ山口での経験を通して、グローバリズムから隔絶された離島の生活誌をフィルムで記録するプロジェクトなど、新たな表現方法にも取り組んでいます ユカ・ツルノ・ギャラリーでの2回目の個展となる本展では、志村の代表作である《ring ring》の日本初展示を行います。2010年に台北国際芸術村で3ヶ月間の滞在制作をした志村は、旧正月を控えて街中に拡がる金と赤の世界に圧倒されてそこから2つの作品を制作しました。一つは金魚の映像を樹木に投影した《Goldfish》。そしてもう一つが金の鈴をスクリーンに見立てた《ring ring》です。台北では、六角形のすだれ状に吊るされた12万個の鈴のスクリーン上に俯瞰撮影された波打ち際の風景が投影され、天に向かって寄せてはひき返す水の現象は、旧正月には欠かせない花火のイメージにも重なりました。 作品タイトルである《ring ring》は、鑑賞者が作品の中に入る際に鈴が鳴る(ring)ことと、環状(ring)のスクリーンに由来していますが、志村が台北ですぐに耳で覚えた「歓迎光臨(ホワンイングワンリン:いらっしゃいませ)」の臨(ring)にも由来しています。この臨(ring)は「come」を意味し、光の中に人が入ることで完成するこの作品にぴったりだと確信したと志村は述べています。台北の情景から生まれた作品は、ここ日本では五角形に吊された10万個の鈴のスクリーンに形を変え、鈴の音色とともに黄金の光の中に鑑賞者を招きます。
山谷佑介「RAMA LAMA DING DONG」 2015年11月21日~2015年12月19日 山谷佑介は、2013年に発表した「Tsugi no yoru e」で注目を浴び「KYOTOGRAPHIE」(2015年)やニューヨークでの展示に参加するなど、いま最も勢いのある若手写真家の一人です。山谷はこれまで国内外を放浪しながら様々なアンダーグラウンド・コミュニティで過ごしてきました。最後にたどり着いた大阪での、はかない日々を捉えた「Tsugi no yoru e」は、鮮烈なデビュー作となり、国際的に高い評価を得ました。同時に、ライブハウスやクラブの床に原寸大の床写真を貼り、アルコールや靴の跡などが残された写真シリーズ「ground」を発表するなど、ストレートなスナップ写真だけでなく様々な方法で写真を試みるほか、自主企画「ギャラリー山谷」でポラロイドのシリーズ「Use before」を発表するなど活動の幅を広げてきています。 ユカ・ツルノ・ギャラリーでの2回目の個展となる本展は、山谷と彼の妻・江美との日本縦断の新婚旅行を記録した作品です。2014年夏、2人はバックパックに着替えとテントを仕込み、北海道から九州までの約1ヶ月の旅に出掛けました。「自分がこれまで生きてきて見てきたものを、奥さんにも、まず最初に見せたかった」と本人がいうハネムーンの記録は、50年代に流行った軽妙なロックンロールナンバー「RAMA LAMA DING DONG」をタイトルに展開されます。初日となる11月21日(土)にはアーティストトークと、限定写真集へのサイン会を開催いたします。
ティム・バーバー「Blues」 2015年10月10日~2015年11月14日 ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、ニューヨークを拠点に活躍する写真家ティム・バーバーの個展『Blues』を、2015年10月10日〜11月14日まで開催します。 今回ユカ・ツルノ・ギャラリーでの4回目の個展となる『Blues』では、iphoneで撮影した画像をサイアノタイプと呼ばれる技法でプリントした、美しい青色の作品群を展示いたします。初日となる10月10日には、来日中のバーバーを囲んでオープニングレセプションを開催します。当日は作家本人によるアーティストトークのほか、モノグラフ「Blues」のブックサイニングを行います。ぜひこの機会にご来場ください。
流麻二果(ながれ・まにか)の個展「一葉 / Rivers need Springs」 2015年8月5日~2015年10月3日 ユカ・ツルノ・ギャラリーは流麻二果の個展「一葉」を2015年9月5日(土)〜10月3日(土)まで開催いたします。 流麻二果はこれまで、日本の自然や、日常ですれ違う他人への興味をテーマとした油彩画を発表し高い評価を得てきました。断片的に織り込まれた主題は、流がもつ類い稀なる色彩感覚をもってやがて抽象的に、大胆かつ繊細に、強く美しく描かれ、鑑賞者の想像力を刺激します。主題と背景が互いに呼応し溶け込むような画面は、キャンバスの質感、そこに染み込む淡い色、多彩な絵の具の重なり、線、輝き、透明感など、様々な要素のレイヤーにより創り出されています。約3年振りの個展となる本展では、新作を中心に、様々なサイズの作品を約10点ほど展示いたします。本展のタイトル「一葉」とは、「一葉知秋」(一枚の葉が落ちるこ とで秋の訪れを察知すること)から引用されています。僅かな兆しから物事の本質を察知する、という意味の通り、一見すると静寂な画面の奥に潜む、作家の想いを想像させるような作品群が発表されます。 展覧会初日となる 9月5日(土)には、オープニングイベントとして、作品からインスピレーションを得たコンテンポラリーダンスのパフォーマンスを開催いたします。ぜひこの機会にご来場ください。 作家ステイトメント 厳しさを具えて佇む、自然。 捉えきれる事などない、他者。 描き続けてきた、その有機な存在は、 キャンバス上で私の想いを含んで姿を変えても、細部から空間へと匂い立つ。 キャンバスの前に立つ。 一枚の葉が落ちて秋を知るように、一筆、一色からその気配を知る。 一片を知る。 予感を知る。 絵画と、密な時間を持つ。
グループ展「Oil on canvas」 2015年7月28日~2015年8月29日 ユカ・ツルノ・ギャラリーは笠井麻衣子、田村友一郎、流麻二果、新田友美、松川朋奈、安田悠、そしてイギリス人ペインター、カイエ・ドナシェによるグルー プ展「Oil on canvas」を、2015年7月28日(火)~ 8月29日(土)まで開催いたします。油彩の小品がリズミカル並ぶ、夏らしい展覧会です。
狩野哲郎・安田悠「Ideal practices」 2015年4月11日~2015年5月9日 「理想主義者にとっての風景は、いかにも崇高の極致で想像上にしか存在しない架空の観念の典型のようであるか。名前も知り得ないほど遠くから描かれた抽象的な風景を絵の向こう側、名前も見えないくらい遠くから眺めてみるとそれは具体的な彫刻だった。間に立って観測者たるのは、画家でも彫刻家でもない。」 この展覧会の試みは、自分が作品制作において実践しているあいまいなルール「既成品や自然物などのさまざまなを素材と自身の手による造形を等しく扱うこと」を展示構成に適用することです。画家によって描かれた、具体的、あるいは抽象的な絵をあたかも既存の色彩として扱うことにより画家の意図していなかった絵の見え方や、絵が彫刻だったかもしれない可能性すら見えてくるかもしれません。できるだけ多くのものごとを等しく扱い、その中から見るべきものを自ら見つけること。それはひとつの理想的なプラクティスとも言えるのではないでしょうか。 狩野哲郎
新田友美「Infinite Set 4」 2015年2月14日~2015年3月21日 白い背景に立つ一人の人物像。私が現在描き続けているシリーズ「Infinite Set」は、私たちの存在のありかたのメタファーであり、この世界についての記述である。 一人の人間とは、あたかも「無限集合/Infinite Set」を仮に一つの纏まりとして引き受けている存在のようだ。膨大な数の細胞の生と死で維持される生命活動、主観と分かちがたい知覚や認識、深遠な広がりを持つ心の活動。その全体像を把握しようとすることは、まるで宇宙を理解しようとするようなものだ。そんな生命を抱えつつ、自己や世界の同一性を信じて生きていられる私達のことが、私には深い驚きであり謎である。 人は私にとって根源的なモチーフである。一人の人物像を描くことを通して、私達や世界の深層に近づけたら、と考えている。
大﨑のぶゆき Nobuyuki Osaki「Reparatur-Trace Trip,Time capsule 」 2015年1月10日~2015年2月7日 本展では、映像、絵画、ドローイング、写真、それらに関連するモノなどから構成されるシリーズ「Trace Trip」の新作を発表いたします。2013年から京都やハンブルグで発表している「Trace Trip」のシリーズは、友人へのインタビューやアルバム写真などを元に、現地を訪れたり、webから情報やイメージを引用しつつ他者の記憶や過去を「トレース」する方法で制作されています。本展では、今回のモチーフとなった友人(H・K)の記憶や記録をめぐり、日本各地を訪れて取材を行いました。その過程で大﨑は、記憶のあいまいさや不確かさなどから生まれる齟齬や差異、過去から現在という時間軸の中で変化した現実などを発見し、友人の記憶や記録という個人史と実際の現実とのズレや変化を作家の視点で補完し、想像しながら再構築する新たな物語として提示しています。作品制作の上で基軸となったインタビューを開示せず、友人の記憶と作家の想像、また鑑賞者の記憶や経験から想像をめぐらすことで生成される多重に折り重なった物語である「フィクションの連続」を通して、大﨑は「この世界の在り方」について問いかけています。
ホセ・パルラ / カンディダ・ヘーファー 2014年12月6日~2015年1月31日 11月に新しくオープンしたワールドトレードセンターーにホセ・パルラの壁画が飾られたことを記念して、 2013年に東京で制作された16メートルの作品「Haru Ichiban」を再展示いたします。 また同時に、カンディダ・ヘーファーの大型作品4点も展示しております。
Alexander Gronsky アレキサンダー・グロンスキー 2014年9月6日~2014年10月25日 本展では、グロンスキーの代表作である3つのシリーズ『less than one』、『the edge』、『pastoral』の中から選ばれた10点を展示いたします。 どれもロシアの郊外の風景が被写体ですが、『less than one』(2006-2009)では、一平方キロメートルに1人以下という人口密度のロシア辺境に焦点を当てています。また、『the edge』(2008-2009)では、旧ソ連時代の集合住宅が多く見られるモスクワ郊外の雪景色に目を向け、『pastoral』(2008-2012)では、大都市モスクワと田舎の中間域での人間の営みを捉えています。 本展開催にあたり、最新のモノグラフ「Less Than One」(TYCOON BOOKS)を出版いたします。 会期半ばの10月3日には作家が来日しレセプションパーティーを行うほか、トークイベントやブックサイニングも開催予定です(詳細は後日お知らせします)。 作家・作品について アレキサンダー・グロンスキー(b.1980年)は、現代ロシアのランドスケープに焦点を当てた作品で国際的な注目を集めている写真家です。1999年からロシア・旧ソ連地域で報道カメラマンとして活動した後、2008年よりパーソナルなドキュメンタリーを撮りはじめ、現在は風景写真家として広大な画面を捉えることで、周辺環境と地域住民の関係性を探求する作品を制作しています。 作品の特徴として、グロンスキーは一枚の写真の中に、あらゆる意味での「境界線」を潜ませています。それは、水平線で示される視覚的な境界線だけでなく、郊外と都市、社会主義の遺産としてのインフラと手つかずの自然、私的空間と公的空間、生と死といった様々な境界でもあり、また同時に、それらの全てが一つの画面に収められた、境界のない大地の風景としても提示されています。
寒川裕人「from the future」 2014年7月26日~2014年8月30日 Eugene Kangawaは、プロセスに重点を置きつつも、美しく軽やかな映像表現で注目を集める作家です。本作「from the future」は、福島とプノンペン(カンボジア)、2つの異なる文脈を横断することで浮き上がるシリアスな題材を、独自の表現方法で美しく収めた〈supervision〉シリーズの一環として2012年から2013年にかけて製作された映像作品です。 本展では3チャンネルのインスタレーションとして展示されます。 本作に至るプロセスとして作家は、福島とその周辺に関して一連の情報がない人物を海外から福島へと招き、「ここでいつ何が起きたのか」という想像の物語の執筆と風景の記録を依頼しました。それらをもとに構成された映像/写真作品『from the future』は逆説的に、その場所について何も知らない人物の視点によって、福島という場所の記憶が忘れ去られてしまった〈未来〉という、今後十分に起こりうることの擬似的な可視化を試みたものでもありました。 今回の作品は、その想像の物語を改めて見返す中で、“この場所はクメールルージュ後のプノンペンと似ている”という一文に着目した作家自身によって、観光地と化したプノンペンの遺跡、そしてかつて訪れたのと同じ福島の場所へと再度赴き、撮影されたものです。これらの映像は、本来関係がないであろう2つの文脈を解体しつつも、多様な共通項で繋ぎ合わせられ、人工、自然、生と死、循環といったエレメントを美しく連想させます。断絶と接続、記憶の風化といった問題を、直接的な方法ではなく、極めて強い批評的な態度で描き出した本作品は、時間が経つにつれて記憶から遠ざかりつつある重要なテーマの存在を、観るものに喚起させる機会となるでしょう。
安田悠「Between」 2014年6月7日~2014年7月12日 安田悠は1982年香川県生まれの油彩作家です。武蔵野美術大学大学院在学中より注目を集め、2007年の卒業と同時に、「ART AWARD TOKYO」(行幸地下ギャラリー、東京、グループ展)、「TWS –EMERGING 2008」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京)に選出されて展示を行い、翌年には「VOCA展 2008」(上野の森美術館、東京)に出展しました。以降も「Art in an Office」(2011年、豊田市美術館、愛知)、「RYUGU IS OVER!! 」(2012年、竜宮美術旅館、横浜)などの展覧会に参加する一方、最近では6月に竣工する虎ノ門ヒルズに常設されるパブリックワークなどを手がけるなど活動の幅を広げてきています。 安田悠は独自の現代的な感性で油彩というメディアにこだわり続けながら、幻想的な情景を、空間、時間が混じり合う陽炎のような独特のタッチと色彩のレイヤーで描き出し、既存の時空概念から解き放たれた流動的な絵画世界を創出します。活動開始当初より特定の場所や人物といった具体的な要素のない心象風景を描き続けていますが、近年ではさらに抽象的な表現へと変化してきています。 「色と色の関係性を考え、筆跡の必要性や意味を探り、意識して出来ることと出来ない事を繰り返しながら最終的に風景画という形に収められた」と安田が言うその画面は、鑑賞者をさらにキャンバスの奥の世界に引き込むと同時に外側に続く景色を想像させます。それはまた、私達の潜在的意識の中の風景あるいは予言的風景のようにも感じ取ることが出来るでしょう。本展のタイトル「Between」にはこういった「中間的な風景」という意味と、「絵の内容がすべてを主張をするのではなく、見る人との間で何かがリンクする作品でありたい」と言う作家自身の思いが込められています。 約3年ぶりの個展となる本展では、様々なサイズの油彩画を展示いたします。安田の渾身の最新作に是非ご期待ください。
Candida Höfer(カンディダ・ヘーファー) 2014年3月7日~2014年5月10日 ユカ・ツルノギャラリーでは2014年3月7日から5月10日まで、カンディダ・ヘーファーの個展を開催いたします。日本での初個展となる本展では、図書館、劇場、宮殿の写真など代表的なモチーフの大型作品7点を展示いたします。 カンディダ・ヘーファーは1944年生まれ、ケルン(ドイツ)在住。ドイツの現代写真を代表するアーティストであり、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、トーマス・ルフらとともに、ベッヒャー派の一人として世界的に知られている写真家です。1973年から 82年までデュッセルドルフ美術アカデミーに在籍し、映画を学んだ後、べッヒャー夫妻に師事。図書館や宮殿など豪奢な建築の室内空間を正面から撮影した作品で世界的に注目を浴び、2003年にはベネチア・ビエンナーレのドイツ館代表に選ばれています。 ヘーファーの初期作品では、ドイツのトルコ人移民労働者によってもたらされた都市の視覚的変化を扱っていますが、この主題から建造環境が人に与える影響について関心が広がったことにより、鉄道、駅、温泉、図書館、美術館、動物園、銀行、オペラハウスなど、文化的象徴となる豪奢 な建築物から日常的な建物に至るまで様々な公共空間を撮り続けてきました。ヘーファーが捉える人の存在しないイメージは逆説的に、その空間にいた人物を思い起こさせます。 ヘーファーの幅2メートルにも及ぶ大型の写真作品の前で私達は、空間の形式、構造、細部、建築物の意図と現状の間に生じる矛盾や歴史的変化について思いを巡らせることでしょう。 カンディタ・ヘーファーはこれまでに、クンストハレ・バーゼル、クンストハレ・ベルン、フランクフルト現代美術館、ニューヨーク近代美術館、パワープラント(トロント)、クンストハレ・ブレゲンツ、ラディック美術館(ケルン)など多数の美術館で展示をしてきました。2002年にドクメンタ11に参加し、2003年には マルティン・キッペンベルガーと共にベニス・ビエンナーレのドイツ館代表として選ばれました。2013年には、クンストパラスト美術館(デュッセルドルフ)にて個展を開催しています。 今回の個展のために、作家本人が来日いたします。3月8日(土)には作家を囲んでレセプションパーティーを開催いたしますので、皆様のご来場とご高覧を、心よりお待ち申し上げております。
山谷佑介 「Tsugi no yoru e」 2014年2月12日~2014年3月5日 「Tsugi no yoru e」は、2013年に山谷が自費で出版した写真集のタイトルです。2010年、国内を放浪していた山谷が最後にたどり着いた大阪を舞台に、そこで出会った友人達と過ごした日々を記録した本書は、国内外で好評を得て即完売となりました。山谷にとっての本格的な初個展となる本展では写真集「Tsugi no yoru e」のプリント51枚を展示いたします。また、本展にあわせて「Tsugi no yoru e」のセカンド・エディションをユカ・ツルノギャラリーから出版いたします。2月15日(土)18:00より作家を囲んでレセプション・パーティーを行いますので、ぜひご参加ください。 作家・作品について 山谷佑介は1985年新潟生まれ、現在東京を拠点に活動している写真家です。立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務し、その後移住した長崎で出会った東松照明や無名の写真家たちとの交流を通して写真を学び、作家としての活動を開始しました。これまで、ミラノのスクワット、東南アジアのパンクスなど、国内外の様々なアンダーグラウンド・コミュニティに自身を溶け込ませ、生活を共にし、遊びながら、そこにある日常を、彼自身が現代に生きるアウトサイダーの一員としての繊細な視点で撮影しつづけています。山谷は自身の作品について「情報、場所、関係が本来持つ重みを失い、全てが画一的になりがちなこの時代の中で、未だストリートやアンダーグラウンドに残る混沌や生の匂いを切り取り記録することが私の仕事かも知れない」と語っています。
狩野哲郎「絵か彫刻」 2014年1月11日~2014年2月8日 作品紹介 狩野哲郎は、既製品や種子・果実といった植物を組み合わせることで、空間へのドローイングとしての新しい「風景」を造り出してきました。2009年から取り組んでいるインスタレーション「自然の設計/Naturplan」では、時に作品の中に野鳥が入りこみ、人間にはコントロール出来ない「他者」が内包されます。こうした狩野の作品世界では、モノや空間があらかじめ持っていた意味や機能から逸脱して扱われることで、人間にとっての価値観や認識方法が宙づりにされ、普段、私達が意識することのない新たな知覚や複数の世界認識の存在を想像させます。 展覧会について 狩野はこれまで、滞在型制作のプロジェクトを中心にインスタレーション作品を展開してきましたが、それと並行して、マスキングテープなどを用いた平面のドローイング作品も制作しています。本展では、形式上は区別される空間のインスタレーションと平面のドローイングに共通する問題を扱う作品として、「オブジェの造形物としてのあり方」に焦点を当てた「野生のストラクチャ/ Savage Structures」を展示いたします。この新シリーズでは、新たな世界認識を示唆することでモノや場所の意味や価値を問い続けるとともに、インスタレーションでありながら、彫刻としても成り立っていく狩野作品の新たな側面を見ることができます。 作家ステイトメント 絵か彫刻 インスタレーションの要素を還元し、絵か彫刻として提示する。 取り出した要素には手を加えずに注意深く分析し整列する。 鳥や植物の世界認識への想像力を手がかりに、曖昧な、あたらしい自然の設計ルールにそって構成されたこれらの要素をべつの極から見ると、絵か彫刻かもしれなかった。 陶磁器製品やガラス製品などの既成品や植物や果実などの自然物を組み合わせた、複数点のオブジェがる。 多様な素材を人工物/自然物、機械生産/手工芸、具体物/抽象物、有機物/無機物など単純に二極化してとらえるのではなく、元の文脈や機能から切り離し、何らかのベクトルを持たない色彩/形態/質感のファウンド・オブジェクトとして扱いコラージュ/アッサンブラージュする。 それらは明確な目的を持たない純粋な標識、あるいは野生のストラクチャとも言えるだろう。 作品の完成形からの逆算とは無関係に色彩/形態/質感は選択が繰り返されることは理想的な絵や彫刻からは少し遠くあったが、一見、非合理的にも思えるこの方法はいままだ存在しない可能性を持った何かを作るための唯一の合理的な方法でもあるように思える。
Bruce Davidson 2013年11月19日~2013年12月21日 本展では彼の半世紀に渡るキャリアを振り返るべく、50年代の代表作である「Brooklyn Gang」を中心に「Time of Change」「East 100th Street」「Circus」など彼の代表作のプリントを展示いたします。 1933年シカゴに生まれたブルース・デビッドソンは、写真集団マグナムの一員でありアメリカを代表する写真家です。現在もニューヨークを拠点とし、その変化を50年以上に渡り写真を通して表現してきました。従来の報道写真とは違い、常にアウトサイダーの視点を持ちながら社会の弱者に注目し、内側から捉えるというスタイルが彼の写真の特徴です。今回展示される1959年に撮影されたブルックリンのストリートギャングの日常をドキュメントした「Brooklyn Gang」では、社会や家庭で受け入れらず、反逆していても実は繊細な心を持つティーンたちのひと夏が共感と優しい眼差しで収められています。
ティム・バーバー「RELATIONS」 2013年9月28日~2013年11月9日 一見無造作な場面の中に混然と潜む繊細な美しさを発見し、切り取る、その鋭く独特の審美眼で近年益々注目されているティム・バーバー。バーバーの作品は観 るものにとって寛容で受け取り易いイメージであると同時に、どこか謎めいたナラティブな要素が織り込まれ、私達の目線を惹き付けます。ポートレイト、ラン ドスケープからナラティブな場面に至るまで、バーバーが親密な感覚をもって追求する主題は多岐にわたっています。 今回YUKA TSURUNO GALLERYでの3回目の個展となる本展「Relations」では、これまで未発表の新作23点を展示。また、本展にあわせて、ティム・バーバー本人 のデザインと編集による、最新のモノグラフ「Relations」をリリースいたします。前回の個展に併せて出版された「WELCOME TO EARTH」に続き、弊ギャラリーから出版される2冊目のモノグラフになります。9月27日(金)6時~8時まで、ティム・バーバー本人を囲んでレセプ ションパーティーとブックサイニングを開催いたします。 ティム・バーバーは、1979年バンクーバー生まれ、西部マサチューセッツ州育ち。現在はニューヨークを拠点に活動しています。写真家であると共にキュ レーターとしても知られているバーバーは、「Vice Magazine」のフォトエディターとして活躍後、オンラインギャラリーとイメージアーカイブのサイト www.tinyvices.com を立ち上げ、その後のアート界に大きな影響を与えました。現在もフォトグラファーとして多彩な展開をする一方、世界各地のギャラリーで個展やキュレーション展を多数開催しています
笠井麻衣子「Neighbor’s Garden」 2013年8月24日~2013年9月21日 笠井麻衣子(1983年生まれ)は、日常生活で目にする風景に自身の作り上げた物語を練り込み、その想像上の物語の中で生活するための訓練の必要度や、社会的に制御された側面を描き出します。勢いのある筆致とキャンバスの余白を生かした大胆なコンポジションが特徴の画面には、様々な武器を手にした少女や、ウサギの着ぐるみな ど、様々な物語を想起させるユニークなモチーフが登場します。しかし、これらは時に背景と同化するような曖昧な構図や色彩と即興的な筆触により意識的に抽象的に表象され、さらなる虚構の想像世界を導き出します。彼女の物語の中で力強く立ち向かう画中の少女は、さまざまな内面的葛藤を抱え、あるいは社会の諸問題と直面する現代人の姿のようにも見てとることができます。 弊ギャラリーでの2年半ぶりの個展となる本展では、小品から大作まで、様々なサイズの作品を展示いたします。爽快感と力強さの溢れる笠井の作品世界にご期待ください。
グループ展「Summer Group Show 2013」 2013年7月13日~2013年8月10日 YUKA TSURUNO GALLERYでは7月13日から8月10日まで、グループ展「Summer Group Show 2013」を開催いたします。東雲の新スペースTOLOT / Heuristicc Shinonomeへの移転後、第一回目となるグループ展として、コンセプト、コンテクスト、クオリティを重視した弊ギャラリーのセレクションにおいて所属するアーティストの様々な表現を紹介いたします。本展では、mamoru、狩野哲郎、笠井麻衣子、田村友一郎、クワン・シャンチ、流麻二果、新田友美、 志村信裕、大崎のぶゆきらの若い才能に加え、ホセ・パルラ、ティム・バーバーの作品を展示いたします。
志村信裕「Slow Sculpture」 2013年6月8日~2013年7月6日 志村信裕は「光をあてる」をテーマに、ビデオプロジェクションによるインスタレーション作品を発表しています。身近な ものや風景の実写映像を特殊な場所や素材に投影することで既存の空間を変容させるという特徴的なインスタレーションは、「あいちトリエンナーレ 2010」(愛知)や「Experimenta」(メルボルン)などの数々の国際展や展覧会で注目されてきました。これまで、横浜の路地裏に赤い靴の映像 を投影した《赤い靴》、商店街の庇にリボンの映像を投影した《ribbon》など、降り注ぐ光を鑑賞者に体感させるような野外でのインスタレーションのほ か、料亭の畳に刺した330,000本の待ち針をスクリーンに見立てた《pierce》、バケツに張った水に映像を投影した《bucket garden》など、場所やスケールを問わない展開を見せています。これらの志村作品に共通しているのは、映像と被写体の関係性のアンサンブルにより表現 される記憶や時間性です。 展覧会のタイトルとなっている「Slow Sculpture」は、「残像のような彫刻をつくりたい」という志村の意図であり、映像という触覚という概念のないメディアをひとつの素材として巧みに 扱う作家としての姿勢が表れています。本展では、2013年1月から3月にかけて参加した秋吉台国際芸術村(山口)でのレジデンス・プログラムでの制作を 通して関心を持ちはじめたという、蝋や石材などの素材を被写体に使った映像インスタレーションなどの新作を展示いたします。
ホセ・パルラ「PROSE」 2013年3月21日~2013年5月18日 YUKA TSURUNO GALLERYは3月に東雲に新しくできるアートスペース TOLOT/heuristic SHINONOME内に移転し、そのこけら落としとして3月21日〜5月18日までNYを拠点とするアーティスト、ホセ・パルラの個展「PROSE」を開 催いたします。 ホセ・パルラは、言語や筆記といった要素を取り入れた独自の表現主義的なペインティングを発表し、国際的に高い評価を 得てきています。パルラは、都市の壁こそが歴史、文化、現代社会のエネルギー、人々の記憶や心理が刻まれている場所であると言い、世界中を旅する中で訪れ た街の壁を観察し、対話し、ドキュメントすることが作品制作の原点になっています。アートスペース内の、大小2つのギャラリースペースを使って展開される本展では、キャンバス作品の他、滞在制作によって描かれる約15メートルの壁画ペインティングが展示されます。3月21日には来日中の作家を囲んでオープニングパーティーを行います。また、本展にあわせて作品集を出版する予定です。
流麻二果個展「可視線VisibleEdge」 2013年1月19日~2013年2月23日 流はこれまで「他人への興味」をテーマに、実生活の中ですれ違った現代人の姿を、独特な色彩と線を用い、まるで風景に溶け込むような抽象的な作品を発表し高い評価を得てきました。昨年からは東北に通う中で目にした、日本の自然に意識を傾けた作品を描き、「人から風景」へとテーマを展開させています。展覧会のタイトル「可視線」とは、3.11以降、私たちに美しさだけでなく畏怖や不安を感じさせることになった儚い自然の風景の中に、流の目が捉えた色や線のことを指しています。流は、色彩の鮮やかな濃淡や線の表情、また絵具のもつ光沢や質感を用いて主題を表現します。塗り重ねられた絵具はそれでもなお透明感をもって優雅に流れ、滴り、緊張感と暖かさを交差させながらキャンバス上に壮麗なイメージを作り出します。こうして築き上げられた画面は、矩形の枠を越える広がりと奥行きを持ちながら私たちの感覚を震撼させ、想像力を促します。本展では130号の作品「可視性」を中心に、その他10点ほどのペインティングをインスタレーション形式で展示いたします。昨年以降ワークショップ等で被災地の支援に尽力しながら、自分は「ただ描き続けるしかない」と語る作家の渾身の最新作に是非ご期待ください。本展は現在のロケーションで開催される最後を飾る展覧会として開催いたします。
田村友一郎「NIGHTLAND」 2012年11月24日~2012年12月29日 YUKATSURUNOでの初個展となる「NIGHTLAND」では《NIGHTLESS》の概念を掘り下げた新たなインスタレーションを発表します。これまで《NIGHTLESS》はスクリーンのみの上映にとどまらず、キャデラックを用いたインスタレーション(2010年、東京藝術大学終了制作展)や、映像に基づいてタクシーの運転手による物語が紡ぎ出される《TALELIGHT》(2010年、横浜市民ギャラリーあざみ野)といった広がりをみせてきました。昼間に撮影されたグーグル・ストリートビューの写真を使って構成されている《NIGHTLESS》は、まさに「夜がない」仮想の旅です。人類の歴史における「移動」すなわち巡礼、聖戦、旅行、そして鉄道、自動車、飛行機といった移動手段自体の変遷をも結びつけながら、本展では、インターネットの発達によってますます広がりをみせる「土地」に関する視覚イメージと実際の経験による視覚イメージの認識、そして移動が生み出して来た「土地」を巡る歴史を、フランスのクレルモン・フェランを起点とする映像作品《NIGHTLESS》の新しいヴァージョンを含むインスタレーションとして編み上げます。「飛行機の窓の閉めたシェードからわずかに漏れる光のなか薄いエアラインのブランケットに包まれて眠るに眠れない意識と昼と夜の狭間で見る夢それは白昼夢、なのか」
VariousDrawings:マモル、狩野哲郎、笠井麻衣子、流麻二果、志村信裕、大崎のぶゆき、八木貴史 2012年10月6日~2012年11月3日 ドローイングというと素描や習作としての印象が強いかも知れませんが、自分と何かを繋ぐ接点であったり、思考ためのツール、または完成された作品であったりと、その意味は各々の作家にとって違うのではないでしょうか。今回の展覧会では各作家がドローイングと位置づける作品を展示いたします。
大崎のぶゆき「scribble」 2012年7月7日~2012年8月11日 キャップをせずに放置してしまいインクを出そうと、くるくると書いてしまう、そんな特に意味のない「落書き」を壁に描き出し、それらが溶解し流れ出す様を空間に展開しようと考えている。私がいつも持ち歩く制作ノートを見返すと、インクを出すために書いたであろうもの、また頭にあるイメージが実際のイメージにならず、浮遊したまま描いた「落書き」としか言いようのない痕跡、描き始めて「これは違う」と途中で投げ出されつぶすように書きなぐったものなど、少なからず他者からは「落書き」としか形容しがたいイメージがぽろぽろと出てくる。展覧会タイトル「scribble」とは「落書き」の意味ですが、今回の展覧会ではいわゆるこの「イメージにならなかったイメージ」を使って知覚と認識の境界、またこの私たちの世界の不安定さについての作品を作りたいと思う。
「Painting Never Dies」今津景、桑久保徹、安田悠 2012年5月26日~2012年6月30日 これまで美術史の中では「絵画の死」が繰り返し唱えられ、写真、映像、インスタレーションといった新しい表現形態が起るたびに、その終焉が語られてきまし た。しかしながら、その反動として「絵画への回帰」が起こることはあっても、終焉の時が訪れるはずもなく、20世紀の美術史を振り返れば、依然として絵画 がその揺るぎないポジションを確立し続けてきたことは明白です。一方で大型国際展やアートフェアでは、表現方法の目新しさに重きが置かれる傾向が強く、映像やインスタレーション作品が主流を占めています。こうした状況の中で、敢えてキャンバスと油絵の具という伝統的な方法にこだわりながら、独創的な絵画作 品を描き続ける画家を改めて見詰め直す機会として、今津景、桑久保徹をゲストに迎え、本展を開催する運びとなりました。3人の作家に共通しているのは、描 くことへの強い欲望と、現代的な感性で独自の世界を描き続けることで、時代と積極的に関わろうとしている点にあります。 本展では各作家による大きなサイズの新作1点ずつに加え、小品数点で構成されます。絵画の新たな可能性をテーマに描き出される、今、最も注目される画家3人の競演に是非ご期待ください。
狩野哲郎 「1本で複数の木 / Protean wood 」 2012年4月7日~2012年5月12日 YUKA TSURUNOでの初個展となる本展は、「自然の設計/Naturplan」シリーズの新作インスタレーションとドローイングによって構成されます。タイ トルとなっている「1本で複数の木」とは、生物学者であるユクスキュルの「一本のカシワの木が、多種多様なそれぞれの生物にとって変化にとんだ役割を果た している」という考えに基づくものであり、そこから狩野が独自に発展させたものです。世界をどこか傍観者として眺めるような姿勢で、人間によって意味付け されたものに疑問を投げかけながらも、それらを越えて存在する生き物たちの「自然」とそこから派生する文化に対する狩野の深い洞察が作品をもって立ち現れ ます。
Collected Works
 Kwan Sheung Chi クワン・シャンチ 2012年2月25日~2012年3月31日 クワンの映像作品に共通するのは、成功と失敗や、達成と未完のように、相反する葛藤の継続をテーマにしている点です。例えば、フォークを使ってコップに 入ったホット・チョコレートを全て飲み干す行為を記録した「Drinking a glass of hot chocolate with a folk」や、作家本人が右手と左手でじゃんけんを繰り返しながら勝率を数える「Left vs.Right」の一見無為な繰り返しの中に、私達は二律背反する人生の摂理を見出すことでしょう。また、本展のために新しく作られた「ONE MILLION(JapaneseYen)」では、僅か数枚の紙幣を数える行為を編集上で何度もリピートすることで百万円まで数える映像作品ですが、そこ には貨幣制度の本質や、マネー・ゲームに代表される実態を伴わない経済活動についてのアイロニカルな視点が表現されています。 今回は書物でいうところの「作品全集」という意味をもつ「Collected Works」を展覧会タイトルとし、ビデオのみならず立体作品を含む様々な表現形態の作品を展示します。「Apple Core」はリンゴジュースのパックを素材とした作品ですが、ギャラリーの空間に置かれることで、鑑賞者は、スーパーマーケットとは異なったコンテクストの中で、私達が何を消費しようとしているのか考えさせられることでしょう。
Infinite Set 2 新田友美 2011年12月22日~2012年2月11日 新田友美は京都大学法学部を卒業後、間もなくして画家の道を志し、米国のコーコラン・スクール・オブ・アートなどの美術大学で油彩技術の習得をした後、多摩美術大学に編入学しました。2010年の卒業直後にYUKA TSURUNOで開催した初個展「Infinite Set 1」では、アノニマスな女性像を水晶粉を練り混ぜた油絵の具によってキャンバスに描き、その技術力と卓越した表現力で鑑賞者を魅了しました。 展覧会名にもなっている「Infinite Set」とは新田が今もって描き続けているシリーズです。このシリーズでは膨大な数の細胞の絶え間ない生と死の繰り返しによって維持される生命活動と、そこに立ち昇る物質的営みをはるかに越えた無限に広がる豊かな感情や想像の世界、そしてそこに存在するかどうかも曖昧な認識の世界が、虚無のスペースに浮かぶ女性の身体を通して表現されています。 本展は同シリーズの新作10数点で構成されます。新田が「無限集合としての不安定なひと纏まり/若しくは纏まりとしての境界を逸脱していくような私たちの存在、同時に私たちの認識や記憶のあり方と同じようにどこかに存在しているようで存在しない存在を表したい」と言うように、繊細に塗り重ねられた独特の筆致で表現された、風に吹かれたような姿の儚い人間像は、私たちに存在や認識、記憶について深く問いかけます。是非ご期待ください。
[Lumen・Sonus・Memoria ] OVAR (SHIMURABROS K. & mamoru) / 志村信裕 2011年11月12日~2011年12月10日 YUKA TSURUNOでは、“映像”と“音(響)”にフォーカスした「Lumen・Sonus・Memoria 光・音・記憶」展を11月12日(土)から開催します。 ビジュアル・アートの分野に限らず、映像製作、伝送、投影技術の目覚しい発達は私達のライフスタイルを劇的に変化させてきました。3Dのリアルな映像や、大容量動画配信システムとインターネット網により、PCの前に居ながらにして、私達は世界中のあらゆる出来事を疑似体験することが可能となりました。 同様に音声合成ソフトは、歴史上の人物の声を再現し、文字変換ソフトはテキストを音声にして配信するなど、一昔前のSF小説の中の出来事が現実として存在しています。今回は本展を構成する作品に共通する重要な要素である“光”と“音”と“記憶”について、その根源、本質に迫りたいとの思いから、展覧会タイトルをラテン語で“Lumen”“Sonus”“Memoria” としました。また、プロジェクターの輝度を表す単位がルーメンであることも重要な意味を持っています。
ティム・バーバー「Welcome To Earth」 2011年9月24日~2011年10月29日 YUKA CONTEMPORARYは、この度株式会社YUKA TSURUNOとなりました。その第一弾として、ティム・バーバー「Welcome To Earth」展を9月24日から開催します。当ギャラリーに於いて2回目の個展となる本展では、カラーとモノクロによる、新シリーズを発表します。本シリーズの公開は本展が初となります。 バーバーの洗練された観察眼は、ポートレイトや風景写真のありふれた情景の中に潜む複雑な美しさを見つけ出し、アプローチします。何気ない日常の中のひと コマは、バーバーの繊細なタッチによって切り取られ、印画紙に焼き付けられます。バーバーの創り出すイメージは、一見無造作に撮影されているようでいて、 注意深く眺めれば緻密な画面構成を見てとることができます。同様にフィクションとノンフィクションのどちらにも属さない曖昧で絶妙な彼の作品世界は、予定調和へと安易に流れがちな私達の知覚を揺さぶります。 この新シリーズ「Welcome To Earth」でバーバーは、彼のユニークで詩的な表現をさらに拡大、新境地を拓きました。 9月24日(土)のオープニングレセプションには、ニューヨークから作家が来日します。また、この機会にYUKA TSURUNOより限定版作品集を出版いたします。当日ご購入いただいた方には作家がブックサインをいたします。
"Feel the rhythm, Color me bright, Everyday is a carnival" 2011年7月2日~2011年8月6日 安田悠/八木貴史/笠井麻衣子/岡野訓之/Assume Vivid Astro Focus
松川朋奈「around girls #00」 2011年5月21日~2011年6月18日 ここ数年、松川は緻密かつ写実的な描写で、靴や服といった身近な事物を通して、女性の心象風景を描く「around girls」シリーズの制作に取り組んできました。 当初は物語性を一切排除した単色の背景上に、踵の傷ついたハイヒールや、飾りのパールが切れたパンプスを天眼鏡を通すがごとく画面全面に大きく描き出すこ とで、持ち主の日常生活における一場面を、そのタイトル(「絆がとぎれる」など)と共に、ドラマティックに提示していました。しかし、最近はそのモチーフ が無造作に脱ぎ捨てられた衣服やアクセサリーなどへと広がるに伴い、松川の作品世界もより豊かなものへと変化、多様化してきました。 こうした作品群を一つの空間に並べ眺めれば、まるで知らない誰かの部屋を覗き見ているような不思議な感覚にとらわれます。そしてそれらは、移ろいやすい現 代を生き抜く女性たちのように、華やかでありながら時に奇妙で毒があり、どこかシュールレアリスティックな印象すら与えます。松川の言う「その人自身より も、身の回りの物がより鮮明にその人のことを語る」ことこそ、事物しか登場しない同シリーズ作品が、人物を描いた作品以上に人間の存在や体温を生々しく意 識させる理由なのでしょう。 今回の個展では、「around girls」シリーズの新作に、修了制作で展示された「Warp in her」を加え、小品からF100 号の大作まで、十数点で構成します。ぜひ御期待下さい。
mamoru『etude no.39 インスタントヌードル』 2011年4月9日~2011年5月7日 ここ数年mamoruが取り組んでいる、日常品や日常行為を音体験として読み替えてしまうシリーズ「etude for everyday life/日常のためのエチュード」の第39番となる今回のアイデアは、2010年11月に「MUJI MINI RAMENのためのヴァリエーション」というパフォーマンス作品としてシドニー、メルボルンで発表されました。エフェクターやループサンプラーを用いて、 ラーメンを作る過程に発生するノイズをライブで「編集/演奏」しながら、同時に作り上げたラーメンを観客にも振るまうというパフォーマンスは、現地のラジ オや雑誌、Webなどでも取り上げられ好評を得ました。 YUKA CONTEMPORARYでの展示では、この作品の肝となる「即席麺にお湯を注いだ際に麺が奏でるバリバリという音」を響かせつつ、映像やオブジェ、バ ナーなどをドローイング的に空間に配置して行き、麺と具材の購入、具材下ごしらえ、湯沸かし、最終的においしく食するといったプロセス全体を作品化する事 を試みます。また「東京ーオーストラリア間を移動し、パフォーマンス(調理)され、食されるラーメンの旅」をロードムービー化した映像作品も展示いたしま す。
笠井麻衣子個展「Place no one knows」 2011年2月26日~2011年3月26日 笠井は、日常ですれ違った誰もいない空間、もしくはさっきまで誰かが居たような気配がある場所を見た時に得たイメージを基に制作することが多いといいま す。その様々な場所とは、例えば他人宅の庭、誰も居ない部屋、客はいるのに殆どが空いている遊園地のメリーゴーランドなど、日々の生活のシーンに見られる 余白のある部分を目にすることが起点となります。「私自身が練り上げた物語と仮構性を絵画に込めたい」という笠井は、これらきっかけとなる風景を設定に置 いて生まれるモチーフに、実際のシチュエーションからは考えられにくい脚色されたストーリーを組み込むことにより、イメージそのものを変換することで、そ れらが本質的に持っているドラマティックさとその物語上での生きる(生活する)ための訓練の必要度、社会的に制御された側面を表現しようと試みます。前回の個展では、「アー ツ・ チャレンジ2010 新進アーティストの発見inあいち」での入選作品を中心とした展示でしたが、今回は本展のために描かれた新作を10点ほど展示いたします。ぜひご期待ください。
安田悠個展「面影の向こう」 2010年12月11日~2011年1月22日 独特のタッチと色彩で幻想的な風景を描き続けている安田悠は「時間と空間の歪みからなるものを見てみたい」と言います。作家の目に映る日常の風景は一旦記憶の奥底に仕舞い込まれ、時間のプロセスを通して「曖昧に」表現することで「時間と空間が行き来する」独自の世界観を表現します。この行為を通して作家は、現実と非現実の境界に存在する時間と空間を探り、記憶によって心に思い浮かべる風景を、独特の色彩と抑揚のあるマチエールに彩られた水辺、森、星空などが揺れながら重なり合う風景として描きます。 タイトルにもなっている「面影」という言葉には「まぼろし」「幻影」という意味を含みます。「何の物語性もない、白昼夢にも似た空想の時間を永遠の一瞬として留める」と作家が表現するこれらの幻想的な光景は、心地良い浮遊感とともにどこか懐しく温かい、遠い記憶が呼び起こされるような感覚を鑑賞者にもたらすことでしょう。 本展では新作を約10点ほど展示する予定です。2年振りとなる個展で展開される安田悠の世界観に是非御期待ください。
大崎のぶゆき『falls』 2010年11月6日~2010年11月26日 大崎は「認識する」ことと「見ること」との2つの境界の「間」を考察し、「メタリアル/メタフィクション」という現代社会における私たちを取り巻く状況か ら「描かれたイメージが溶ける」という、独自でかつオリジナルの方法を用いて、この世界の「リアリティの不確かさ」を明らかにしようと試みています。本展 では、三大世界の滝(ナイアガラ/ヴィクトリア/イグアスの滝)を合成した「滝」を元にして描いた新作の映像インスタレーション「World falls/Swimming the world」と、2009年にドイツで発表された、少女の画像を引用した「water drawing - Phantom」ほかを展示いたします。共にCGで作られたものではなく、実際に描いたイメージが溶けていくことによって「現実や非現実」や「リアリティの不確かさ」を追求する大崎の視点と、こ れらの作品を制作するにあたって実際に描く絵画が「溶けてなくなる」ことから何度も同じ絵を描いて撮影し、その幾多の蓄積の中から1カットを選択するとい う方法は、作家自身の描く行為のそのものの「リアリティ」だけが蓄積される「ある・ない」の境界が大崎が垣間みようとする世界であるかも知れません。イ メージを具現化するオリジナル性の高い独自の技法で表現するこれらの作品によって大崎が捉えている眼差しを展開する展覧会となるでしょう。 展覧会タイトル『falls』とは新作の「World falls/Swimming the world」の「滝」のイメージと「落ちる(人々)」からイメージされた言葉であり、現代の社会状況を象徴する言葉とも言えます。
流麻二果『浮々(うきうき)』 2010年10月9日~2010年10月30日 知り合う事のない他人がどんな生活を送っているのか。 その興味を作品にする事で推考を重ねてきた。 街で、メディア上で、私の目を捕えた、見ず知らずの人は、 私の想像と推察によってキャンバス上で姿を変えていく。 私の中に残されたその人の余韻は、 時に、芽吹きを待つ胞子が浮かぶようなキラキラとした景色となる。 やっぱり人と分かり合うのは容易くない。 だからこそ心躍る。
マット・ハンセル個展「With Flying Colors」 2010年9月18日~2010年10月2日 南北戦争の戦場やその他の史跡が数多く残るウェストバージニア州に生まれ育ち、歴史愛好家の父親から影響を受けたハンセルは、新たな事実の発覚によって日 々塗り替えられてゆく歴史の不確かさや矛盾に興味を持ったと言います。この経験が近年の作品に強いインスピレーションを与え、「歴史」あるいは「過去・現 在・未来」の可鍛性をテーマに現在制作に取り組んでいます。マット・ハンセルの作品は、リアリスムとイリュージョンが交錯した具象表現が特徴です。人物像 や建造物の色彩は遠近感は時に奇妙に配置されており、場所や時間が特定されていないことを示唆しています。ハンセルが描くこれらの架空の歴史のナラティブ では、過去・現在・未来の境界線が曖昧に描かれています。 英語の文脈で、"to fly one’s colors" とは英語で「プライドをもって自身の旗を揚げる」という意味を持ちます。また、優勢に物事を成し遂げるさまを"with flying colors" と表現します。本展のタイトルにもなっている「With Flying Colors」とは、これら二つの意味を合わせたものです。今回の個展では、新作のドローイング約10点とナイロン地に描かれた旗ドローイング 「Flag」を数点、インスタレーション形式で展示する予定です。カラフルに彩られたマット・ハンセルのユニークな世界を是非お楽しみください。
笠井麻衣子「Fundamental Training」 2010年8月14日~2010年8月28日 大胆にもキャンバスの余白をそのまま生かした背景・コンポジションと流れるような筆致で表現された躍動感のある画面が特徴の笠井麻衣子。昨今取り組んでい る「training」と題された一連の作品ではスコップ、拳銃、水が激しく吹き出るホースなどを武器に抱えた少女が、時に生まれたての子牛を従えて何か に立ち向かう姿が鮮烈に描かれています。「世の中の様子や情報を私の中の物語と織り交ぜた」という笠井。画面の中の少女は内面的葛藤あるいは現代社会の様々な事 象に対峙する我々に同調しているかのような印象を与えます。作品について、笠井は以下のようにコメントしています。 「日々の生活の中にある様々なモノの成長や変化を見たり感じたりすると、そのドラマティックさと社会的に制御された側面の様子はどんなものだろうと考える (想像してみる)。それらの絶えず繰り返される訓練と物語の流動性が、絵具と筆のかけひきによってどこまで描けるのかを追求したいと思った。そしてそれは あくまで 仮構性に偏った、非現実的なものであることを望んでいる。」 本展では、F150号の「友人を救うための基礎練習」を含む大型作品2枚と、その他新作の小品を数点展示する予定です。ぜひ御期待ください。
八木貴史「ゆめうつつ」 2010年7月3日~2010年7月24日 本展では、「置かれた虹」をはじめ、色鉛筆を素材とした木彫作品の新作を10点ほど展示する予定です。樹脂で固められ、塊となった素材から削りだされた作品は、抽象的なラインを描きながら素材のもつ色と造形が呼応する瞬間を物語ります。制作について八木は、素材に形を与え、彫刻作品へと昇華されるプロセスに着目し、この過程を「ドローイングを描くようだ」と表現します。 こうして生み出されたイマジナティブな作品達は観者の意識を拡張し、「ゆめうつつ」ー あたかも現実と夢のあいだを彷徨うかのような感覚へと誘ってくれることでしょう。是非ご期待ください。 展覧会初日となる7月3日(土)には、作家を囲んでレセプションパーティーを行います。皆様のご来場を、心よりお待ち申し上げます。
野老朝雄展 2010年6月5日~2010年6月26日 野老は、数と図形の規則性を研究しながら造形美を追求している作家です。このため、作品には幾何学模様や記号化された単語などのイメージが組み合わさったものが多くあります。例えば、今回、平面作品として発表される「Kumapong(クマポン)」は、黄金律によって成立するクマの顔のドローイングです。円の配置によって様々な表情のクマポンが登場するだけでなく、黄金律と掛けて金箔が施された作品もあり、ユーモアが程よくミックスされた野老ワールドを展開しています。また、「Respect for Compass」と題する、コンパスの跡が残る図形のドローイングのシリーズでは、建築をバックボーンとする作家らしい繊細な横顔を垣間見る事ができます。 本展では、「Kumapong(クマポン)」、「Respect for Compass」などのドローイング作品のほか、2010年1月から4月まで開催されていた「 MOTアニュアル2010:装飾」で出展された立体作品のシリーズを様々な角度から複写機でコピーした「BUILDVOID STUDY」(COPIED)など、野老が過去から現在まで手がけているプロジェクトを幾つか展示いたします。また、会期中は作家がワークインプログレスでの作品制作や、ゲストを招いたトークイベントを行う予定です。(作家来場およびイベントの日時・詳細はギャラリーウェブサイトにてお知らせいたします)
ANGELICA 01 2010年5月8日~2010年5月22日 ギャラリーアーティストによる平面作品の常設グループ展 松川朋奈(第3回 art_icleアワード 準グランプリ)、流麻二果、新田友美、マット・ハンセル
新人油彩画家・新田友美個展「Infinite Set 1」 2010年4月10日~2010年5月1日 「人間は自分の心や身体についてすら全てを把握することはできない。一つの臓器から細胞の一つ一つに至るまで、それぞれがきちんと役割を知っているかのように律儀に営みを続け、生命活動を維持している。同時にそこでは、物質的営みを越えた豊かな感情や想像の世界が立ち昇っている。それはまるで、無限集合を仮に一つのまとまりとして引き受けて生きているようだ。私の表現の根源的な動機はこのような感覚にある。作品のタイトル、そして展覧会名にもなっている Infinite Setには、無限集合としての不安定なひと纏まり/若しくは纏まりとしての境界を逸脱していくような存在としての人間という意味を込めている。」
アートと音楽を横断するmamoruが、1本のストローで価値観を覆す展覧会「オレンジソーダのためのetude」 2010年3月6日~2010年3月22日 本展では、プラスチックストローの端を、そっと吹くことで鳴る不思議な音をとりあげたetude no.7より新作映像などを発表します。この、「etude no.7 / オレンジソーダのためのヴァリエーション」と題された映像では、コンビニで買ったジュースをストローで飲むという日常的な場面を起点に、単なるストローが作品化していく様子をユーモアを交えて映し出します。 会場には映像に関連したサウンドオブジェや、「オレンジソーダのためのヴァリエーション」を来場者が実際に体験できるドリンクバーが開設されます。また、世界各地のレストラン、カフェテリア、コンビニでストローを集めては音をためし、理想の「音」を追い求めた結果割り出されたデータをもとに工場発注され、作品化されたオリジナルストローや、mamoruによる「世界ストロー財団」というプロジェクトのもと、ストローが世界5カ国約1000人の人達に手渡されてきた記録も併せて展示されます。 また別室にて、昨年の夏から秋にかけてYUKA CONTEMPORARYを含む国内数カ所で行われた「etude no.12 / ノリの佃煮を皆で食べるヴァリエーション」のワークショップ・パーティーをもとに作られた新作映像もインスタレーション形式で発表する予定です。 今回の個展は国内でのetude作品の本格的な初展示となります。 初日となる3月6日(土)のオープニングでは参加者の飲食行為を組み入れた「オレンジソーダ」のデモンストレーションと特製カクテルが用意されます。
若き奇才、ティム・バーバー写真展「Untitled Photographs」 2010年2月6日~2010年2月27日 ティム・バーバーは、自分や仲間達との日常生活の中に無造作に存在する風景や事象をありのままに撮影します。これらの、一見何気ないスナップ写真には、そ の場に漂う空気と共に、時に切なさや鋭い美しさが自然に刻み込まれ、観る者の心に強い印象を残します。 世界各地で巡回展覧会が行われた写真集「SHOOT - Photography of the Moment」(2008年 Rizzoli)では、日常の一瞬をファインアートに昇華させたWolfgang TillmansやMark Bothwickの流れを汲む、この四半世紀で最も重要な若手フォトグラファー26人の中の一人として収録されました。 本展では、ティムが写真家として活動してきた15年間の集積の中から今回の個展のために作家自身がセレクトした作品を展示いたします。作家にとって、今回のYUKA CONTEMPORARYにおける展示が日本での初個展となります。
グループ展「discollage -ものの組み合わせには何かルールがありますか。」 2009年12月26日~2010年1月23日 「ものの組み合わせには何かルールがありますか」と問われ、そのルールが明らかにできるなら、それをもとに「コピー」を作ることができます。しかしルールが明らかにできなかった場合、それは唯一無二の「アート」になるのではないでしょうか。多くのアーティスト達がそうであるように、5名の作家(阿部大介、糸崎公朗、小林史子、彦坂敏昭、八木貴史)それぞれが独自の「問い」を内在しながら、既存する素材を解体、断片化、あるいは繋ぎ、組み立てることにより展開される表現の可能性を探求しています。5名の作家による「ルールへの問い」に何を見い出すことができるでしょうか。本展覧会最終日となる1月23日にはその答えを探るべく、美術批評の沢山遼氏を招いて参加作家によるシンポジウムを開催いたします。 シンポジウム:2010年1月23日(土)16:00~18:00
津村耕佑キュレーション「DREAM CONSCIOUS かたちになりかけた夢」 2009年11月6日~2009年12月12日 今秋新しくオープンしたギャラリーYUKA CONTEMPORARYの第二回目の展覧会 として、津村耕佑キュレーション「DREAM CONSCIOUS かたちになりかけた夢」を開催いたします。津村耕佑はデザイン、アート、建築などジャンルを超えた活動で知られているファッションデザイナーです。本展では、津村氏が美大で教鞭をとる中でスカウトした新人を含む若手作家3人に加え、津村氏本人も、ファッションの可能性を服以外で探る実験ユニット「Monaka」として参加し、そのデビュー作を発表いたします。
ギャラリーオープニング・第一回展覧会 足立喜一朗 「シャングリラ2」 2009年9月18日~2009年10月24日 ギャラリーオープニング・第一回目の展覧会として、足立喜一朗の新作個展「シャングリラ2」を開催いたします。今展で発表される「シャングリラ2」は、「YOKOHAMA創造界隈コンペ 2008」の受賞作品として今年2月にZAIM(横浜)にて発表し、好評を得た展覧会「シャングリラ」の発展型です。このシリーズでは主な素材として植物を使い空間を光りで覆った一見美しい光景を創り出していますが、観るものに何かしらの不調和を感じさせます。このインスタレーションを通して足立は、「私たちの求める理想郷とはいったい何なのか」という疑問を投げかけています。それは「昔から僕は部屋に観葉植物を置く事さえも嫌いだった。幼い頃住んでいたマンションのリビングにあったパキラの植木に挿された栄養剤が点滴に見えたからかも知れない」と言う足立が感じてきた「エコ・ロハス」という言葉の流行に対する違和感から覚え出た疑問であり、また、人々が理想郷と信じているのは実は人工の力で制御された自然、即ち「見せかけの楽園」なのではないかという矛盾に対する問いかけでもあるのです。これらの疑問を提示したうえで足立は、「しかしそれで心が満たされるのではあれば誰がそれを非難できるのか」と言い、観る者に自由な感受を提案します。また、本展覧会では「シャングリラ」を追いかけた平面作品も同時に発表いたします。鮮やかに迸る絵の具の色彩の上に、時間をかけて力強くも繊細に描かれた線描が織りなす新作です。